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稽古場レポート

公演の見どころををお伝えする稽古場レポートが届きました!ぜひお読みください!!

微細なる一瞬に、この作品の命が宿る。豪華キャスト陣による、最上級の"ディナー"をご堪能あれ!

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3月下旬、4月8日に開幕を控えた舞台「フェードル」の稽古場。この日は初めての通し稽古(分割して行われてきた稽古を、冒頭から終幕まで一通り止めずに通す稽古)が行われた。筆者はそれに立ち会った。本作は、フランスの劇作家ジャン・ラシーヌが創り上げた、17世紀フランス古典文学を代表する金字塔的な作品。物語は古代ギリシャ、悲劇へと向かう女性の姿を描く。この歴史的傑作に、今の日本を代表する実力派キャスト陣、大竹しのぶ、平 岳大、門脇 麦、谷田 歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆が挑む。

舞台は、ギリシャ・ペロポンネソス半島の町トレゼーヌ。行方不明となったアテネ王テゼ(今井清隆)を探すため息子イッポリット(平 岳大)は国を出ようとしていた。一方、テゼの妻フェードル(大竹しのぶ)は病に陥っていた。心配した乳母のエノーヌ(キムラ緑子)が原因をききだすと、夫の面影を残しつつ、夫には失われた若さと高潔さに輝く継子イッポリットへの想いに身を焦がしていると白状する。苦しみの末、フェードルは義理の息子に自分の恋心を打ち明ける。しかし、イッポリットの心にあるのはテゼに反逆したアテネ王族の娘アリシー(門脇 麦)。イッポリットはフェードルの気持ちを拒絶する。そんな中、テゼが突然帰還して・・・

ド直球、豪速球、しかも、寸分の狂いもないド真ん中。「THE 舞台芸術」。これが第一印象だ。

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本作の演出は栗山民也。彼の演出は常に難易度が高い。だが、舞台「フェードル」において、彼が創り上げようとしている世界は、その極みに位置するべき素材なのだろう。信じられない程の長台詞、必要最低限、全てに意味のある一挙手一投足による最大級の喜怒哀楽の表現。それは、キャスト陣の目線一つとってみても見逃せない。衝撃の中のさらなる衝撃に、観客は引き込まれ、息を飲む体験をすることになるだろう。破滅へ向かう大嵐の中では、人間はなんと儚いものか。怒り、憎しみ、悲しみ、そして愛の叫び。重厚でズシリと心に突き刺さる。

稽古が一通り終了後のいわゆる"ダメ出しタイム"。栗山からさらなる指導、提案が飛ぶ。その内容は1秒単位の間、手のひらの動き、方向転換の所作など、僅かな修正の連続だ。だが、その微細なる一瞬に、この作品の命が宿る。美しさが増していく。「商業演劇」が「総合芸術」に脱皮する瞬間だ。テレビも映画も無かった中世ヨーロッパにおいて、演劇は娯楽の王様であった。なぜ、その時代から本作が「傑作」と謳われ続け、その時代を代表する俳優が演じるのか。その理由が、4月8日、明らかになる。サラ・ベルナール、ヘレン・ミレンといった稀代の名女優が演じた大役に、大竹しのぶが挑む。

ワインで言えば、フルボディ。コーヒーで言えば、エスプレッソ。観劇したその夜は、きっとクラシックを聴きたくなるに違いない。日本を代表するキャスト陣による、最上級の"ディナー"を是非ご堪能頂きたい。さあ、知るがいい、フェードルを!

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文=田辺 充
撮影=矢野智美

フェードル/ロゴ

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